雑踏事故

10万人が押し寄せたハロウィンの熱狂が、悲鳴に一変した。29日深夜、人波で押しつぶされ約150人が死亡したソウル・梨泰院(イテウォン)の事故。目撃者らは、人々が意識を失う中でも前進を続ける「ハロウィンの悪夢」を語った。

惨事が発生した現場は、地下鉄駅出口横に建つホテル脇の路地。幅2メートルほどと狭く、なだらかな下り坂が数十メートル続く。29日午後10時ごろ、駅前を歩いていた女子学生のチョン・ガウンさん(18)は、ゾンビなどにふんした人々が路地で身動きできず、うめき声をあげる姿に恐怖を感じ、現場を離れた。すでに数人が転倒していたといい、悲劇は始まっていた。

聯合ニュースなどによると、前方で人が倒れた後も人波は前に進み続け、「5~6層に積み重なっていった」(目撃者)。救急隊が到着し、意識を失った人を運び出そうとする間も、路地の上側では状況を把握せず、前進を続けた。現場を逃れた参加者は、SNSに「下に(人々が)倒れたことを知らないのか、ずっと押していた。本当に死ぬんだなと思った」と書き込んだ。

事故発生当時、路地のクラブには人気ユーチューバーが登場し、周辺に人が密集していたという。警察関係者は「路面に酒などがまかれ、滑りやすい状態になっていた」と話す。

現場には救急車140台以上が動員されたが、搬送までに時間がかかり、コスプレをした状態のまま、意識を失った友人らの心臓マッサージを行う姿もあった。一方、現場周辺以外の多くの飲食店は朝まで営業を続ける奇妙な状況が続いた。

朝まで飲食店のハロウィンイベントに参加していたという女性会社員(24)は「救急車が行き交う音は聞こえたが、当初はそれもお祭りの一部かと思った。近所で100人以上死んでいるといわれても、現実味がなかった」と振り返った。

産経新聞より