新卒は辛い
何が起きていたのか
男性は、大学卒業直後の2016年4月、都内の建設会社に就職し、現場監督をしていた。
2016年12月17日、新国立競技場地盤改良工事に従事することになって以降、極度の長時間労働、深夜勤務、徹夜が続いた。自殺直前の1カ月で、徹夜が3回もあり、夜22時以前に仕事が終わったのは5日だけだったという。
男性は2017年3月2日、突然失踪した。「今日は欠勤する」と会社に連絡があり、それを最後に一切連絡がとれなくなった。誰からの連絡にも応じなくなった。
そして、4月15日に長野県内で遺体が発見された。警察・病院の捜査の結果、「3月2日ごろに自殺」と判断された。
男性は診断を受けていないが、遺族側代理人の川人博弁護士は、業務上のストレスもあいまって精神障害を発病した、と推定できるという。
「新国立」工事、スタートの遅れが原因だ
男性が関わっていたのは、セメントを注入して、軟弱な地盤を改良していくという地盤改良工事。チームは5人程度で、新卒は彼ひとりだけだった。現場では、写真撮影、材料の品質管理、安全管理などを担当していた。
新国立競技場は、設計段階で計画が二転三転し、工事のスタートが非常に遅れ
この結果、競技場建設に携わる労働者には、「オリンピックに間に合わせる」ため、大きな重圧がかかっていたと、川人弁護士はいう。地盤改良は、基礎工事の前段階で、すべての工事の前提となるものだ。その作業日程は、極めてタイトなものになっていた