刑事訴訟法
警備員は、他の業務に比べて犯罪に接する機会も多いので、
現行犯逮捕等に関する刑事訴訟法の規定を十分に理解し、不当に他人の権利を侵害することのないよう配慮することが大切です。
(1) 現行犯人(第212条)
「現行犯人」とは、現に罪を行い、又は現に罪を行い終わった者をいいます。
「現に罪を行い」とは、犯罪を現在実行しているという意味であり、犯罪の
実行行為に着手し、それを遂行しつつあり、いまだ終了に至らない場合です未遂について処罰規定のない罪については、未遂の段階では犯罪の実行
行為中とは認められません。

「罪」とは、特定の罪(例えば、窃盗、傷害等)を指します。
したがって、単なる「不審者」であって、何らかの罪を犯している疑いが
あるだけでは不十分であり、現行犯人とはいえません。
ウ「現に罪を行い終わった」とは、当該犯罪行為終了直後を指しますが、直
後の範囲は機械的に何時間と決めることはできないので、具体的状況に応じ
て判断されます。
現行犯逮捕(第213条)
現行犯人は、何人でも、逮捕状なくしてこれを逮捕することができると定め
られています。
ア「逮捕」とは、人の身体を直接に東縛して自由を拘束することをいいます。
イ 逮捕者が被逮捕者の身体に寄り添って看視し、いつでもその身体を捕捉で
きる態勢をとり、その逃走を防止する方法等によって自由を拘束する場合も
逮捕したことになります。
ウ 逮捕に際しては、当然ある程度の実力行使が許されていますが、自ずと限
界があり、犯人の挙動、具体的状況に応じ、社会通念上妥当な方法をとる必
要があります。
おの
(3) 現行犯人を逮捕した場合の処置(第214条)
現行犯人を逮捕する権限は、一般私人にも与えられていますが、これは逮捕
行為が許されているだけであり、取調べ、身体捜検、所持品検査等を行う権限
は認められていません。
したがって、犯人を逮捕した場合は、直ちに警察官等に引き渡さなければな
りません。