警備業法
警備業法は、警備業者及び警備員の活動を律する最も基本的な法律である。
それは、単に手続的な事項を定めるのみではなく、警備業に関する基本的な理
念を示し、警備業の運営及び具体的な警備業務の実施に当たっての規範となる
ものである。
したがって、警備業に携わるすべての者、取り分け指導的な立場にある者は、
警備業法の内容をよく理解し、その趣旨を十分に踏まえて業務を行うことが必
要である。
また、警備業法の下位法令は、次のとおりであり、ここにおいては、「」の中の略称を用いる。
①警備業法施行令……「令」
②警備業法施行規則……「府令」内閣府
③警備業の要件に関する規則……「要件規則」
警備員指導教育責任者及び機械警備業務管理者に係る講習等に関す規則……「講習規則」
⑤警備員等の検定等に関する規則……「検定規則
⑥警備員教育を行う者等を定める規程……「規程」
また、この解説中「公安委員会」とは、都道府県公安委員会の意味である
第1 警備業法の目的について(第1条関係)
第1条においては、警備業法は、警備業について必要な規制を定め、もって

警備業務の実施の適正を図ること」を目的とするものである旨が定められている
警備業法上の諸規制は、すべてこの目的を達成するために設けられているものであり、
その解釈もこの目的に沿って行われる必要があることはいうまでもない

「警備業務の実施の適正を図る」とは、
①警備業務の実施に伴う違法又は不当な事態の発生を防止する。
②警備業務の適切な実施を促進する。
の2点が挙げられるが、これらは警備業法の制定、改正の背景となった次のよ
うな警備業の問題点に対応するものである。
①警備先から金品を盗んだり、警察官を装って金品を詐取するなど警備
員による犯罪が多発していた。
②警備員が労働争議等の際の警備に使用され、ときには不当な干渉を行
うことによって、世論の批判が集中した。
③警備業の量的、質的な発達に伴い警備業に対する国民の期待が増大し
たにもかかわらず、業界内部の無秩序な競争、法的規制の不徹底等のた
めに不適切な業務実施が横行し、一部にはそれによる事故等も見られた。
これらのうち、①及び②は、法制定時に特に問題にされたものである。そし
て②については、法施行後10年を経て一応沈静化したものの、①については、
十分改善されるには至らず、それに加えて警備業の定着を前提とする③の問題
がにわかにクローズアップされるようになったことから、昭和57年の大改正
さらに、警備員がいたにもかかわらず刃物を持った男が空港の手荷物
通過して飛行機に乗り込む、花火大会の雑踏で転倒事故があり子供が死亡する」
現金輸送車が襲撃され数千万円が奪われるといった事故が発生し、特に、
大会での死傷事故の際には警備員の誘導の手順の悪さや、事故発生後の処
不手際などがマスコミでも大きく取り上げられた。その一方で、
する脅威の高まりや治安の悪化に伴う犯罪の多発傾向を受け、平成15年、警察庁の「緊急治安対策プログラム」及び犯罪対策閣僚会議の「犯罪に強い社会実現のための行動計画」においては、安全で安心なまちづくりのため「警備業の
育成と活用」を進めるとされた。これらを受けて、警備員の知識及び能力の向上、
警備業務の依頼者の保護を中心として平成16年に大幅な改正がなされ、平成17年11月に施行された

警備業法は、実施の警備業務の実施にまつわる種々の問題点を解決することによって、警備業の健全な発達を促進しようとするものであり、

その考え方が警備業に携わる全ての者に浸透しなければ十分に目的を達成することはできない