女性警備技術士 美咲の挑戦(第7話)
冬の気配が漂い始めた朝、美咲のスマホに一通のメールが届いた。
差出人は警備大学校の講師・田所。件名には「特別依頼のご相談」とあった。
内容を読み進めると、そこにはこう書かれていた。
――来月、市役所前広場で開催される「防災・防犯フェア」にて、警備技術士のデモンストレーションを行いたい。
――美咲さんとロボダンに、現場の代表として参加してほしい。
「代表…?」
胸の奥が熱くなる。資格を取ったばかりの自分に、そんな大役が回ってくるとは思っていなかった。
後日、大学校で打ち合わせが行われた。
田所講師は真剣な表情で説明する。
「今回のフェアは市や警察、消防も参加します。来場者は大人から子どもまで幅広い。
ロボダンを使って“誰でもできる安全な誘導”を実演し、警備技術士の存在を広く知ってもらいたいんです」
美咲は少し迷った。
観客の前での実演は、祭りやイベントとはまた違う緊張感がある。
だが、大地が背中を押した。
「絶対いい経験になりますよ。美咲さんならできます」
準備期間は短かったが、美咲はロボダンの音声パターンを増やし、動作の精度を高めた。
子ども向けには優しい声で、
「横断歩道は手を挙げて渡りましょう」
大人向けには落ち着いた声で、
「車両進入禁止区域です。安全な経路をご利用ください」
そして迎えた当日。
市役所前の広場には、多くの来場者が集まっていた。
美咲はマイクを握り、ロボダンと共に前に立つ。
「本日は、警備技術士が現場でどのように安全を守るのかをご紹介します」
ロボダンが動き出し、声と動作で人々を誘導すると、会場からは驚きと笑顔があふれた。
デモ終了後、見学していた市の防災担当者が近づいてきた。
「素晴らしい実演でした。ぜひ来年の地域防犯計画にも協力していただきたい」
美咲はロボダンの横で深く頷いた。
――これは、また新しい挑戦の始まりかもしれない。
冷たい冬の風の中で、美咲の胸には確かな温もりが広がっていた。