講習での苦戦と仲間との出会い

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女性警備技術士 美咲の挑戦(第2話)

 講習2日目の朝。
 美咲は、少し重たい工具箱を抱えながら教室のドアを開けた。
 部屋の中央には、昨日バラバラに分解されたロボダンの部品が整然と並べられている。
 「今日は音声モジュールの組み込みとプログラム入力をやります」
 講師の声が響くと、受講生たちは一斉にパーツを手に取った。

 美咲は早速作業を始めたが、音声が出ない。
 配線は合っているはずなのに、ロボダンは沈黙したまま。
 「……また失敗か」
 肩を落とす美咲の横で、隣の席の青年が声をかけた。
 「もしかして、マイナスとプラス逆になってません?」
 彼の名前は大地。元は電気工事士で、今回初めて警備技術士に挑戦しているという。
 「ほら、この赤と黒を逆に差し替えてみてください」
 半信半疑でやり直すと、ロボダンのスピーカーから明るい声が響いた。
 「おはようございます!」
 「……やった!」
 美咲は思わず笑顔になった。

 午後の授業では、スマホでロボダンを動かす練習。
 アプリ画面のボタンを押すと、ロボダンが小さく前進し、手を振る。
 「かわいい!」
 教室中に笑い声が広がる。
 講師は真剣な表情で言った。
 「警備技術士は、ただ機械を動かす人じゃありません。現場を安全にし、人々に安心感を与える存在です。」
 その言葉に、美咲は胸の奥が熱くなった。

 休憩時間、大地がコーヒーを差し出した。
 「美咲さん、現場経験長いんですよね? だったら絶対、この資格活かせますよ」
 「そうかな……。機械は得意じゃないし」
 「得意じゃないからこそ、現場で使える形にできるんですよ」
 その言葉に、美咲は小さくうなずいた。
 ――やるしかない。
 ロボダンと自分の新しい未来のために。

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