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女性警備技術士 美咲の挑戦(第3話)
講習も終盤に差しかかった日。
美咲たちは、校舎裏の駐車スペースに集められた。
そこには、模擬現場として設置されたカラーコーン、誘導旗、そして一台のロボダン。
講師が説明する。
「今日は模擬現場テストです。ロボダンと連携しながら、人や車を安全に誘導してください。」
初めての屋外テストに、美咲の心は少し緊張していた。
設定は「工事現場入口」。
ロボダンが入口脇に立ち、来場者へ音声案内をする。美咲はその横で、旗を使って車両を誘導する役目だ。
テスト開始。
美咲がスマホアプリでボタンを押すと、ロボダンが動き出し、明るい声で呼びかけた。
「工事中につき徐行でお進みください!」
そのタイミングで美咲が手を挙げ、ドライバーに減速を促す。
車はスムーズに停車し、歩行者も安心して通り過ぎた。
しかし、途中でハプニングが起きた。
強い風でロボダンの帽子が飛ばされ、子どもが追いかけようと走り出したのだ。
美咲はとっさにロボダンを停止させ、子どもに近づいて声をかけた。
「危ないよ、こっちに戻って!」
ロボダンも即座に音声を切り替えた。
「安全な場所に戻ってください」
講師が頷く。「今の判断、とても良かったですね。」
テスト終了後、美咲は深く息を吐いた。
大地が笑いながら近づく。
「やっぱり現場慣れしてますね、美咲さん。俺なら焦って止まれなかったかも」
美咲は少し照れながら答えた。
「ロボダンがいたから、落ち着いて動けたんだと思う」
夕方、講習会場を出ると、茜色の空が広がっていた。
――この資格を取ったら、本当の現場でもロボダンと一緒に人を守れる。
美咲は胸の奥で、強くそう誓った。