資格試験

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女性警備技術士 美咲の挑戦(第4話)

 講習の最終日。
 会場に入った瞬間、美咲の心拍は少し早まっていた。
 今日は「警備技術士三級」の資格試験本番。
 筆記試験と実技試験、その両方をクリアしなければ合格できない。

 筆記試験は、警備業法、道路交通法、そしてロボダンの構造や操作方法に関する問題が並ぶ。
 美咲は深呼吸をして、迷わずペンを走らせた。
 講習で繰り返し学んだ知識が、自然と頭から引き出されていく。
 ――大丈夫、やれる。

 続く実技試験は屋外。
 模擬現場は「イベント会場入口」で、来場者の誘導と車両の安全確保が課題だ。
 美咲はロボダンを起動し、音声案内を開始。
 「こちらでチケットをご提示ください」
 観客役のスタッフが近づくと、美咲は旗で誘導し、車と人の動線を分けた。
 途中、ロボダンが予定外の方向に少しズレたが、美咲は冷静にスマホで修正。
 最後まで事故なく誘導を終えた。

 試験終了後、控室で待つ時間が長く感じられた。
 窓の外の空は少し曇ってきて、湿った風がカーテンを揺らす。
 やがて講師が名簿を手に入ってきた。
 「では、合格者の発表を行います」
 名前が一人ずつ読み上げられ――
 「……是枝 美咲」
 自分の名前が呼ばれた瞬間、美咲の胸に熱いものが込み上げた。

 控室を出ると、大地が駆け寄ってきた。
 「おめでとう! やっぱりやりましたね」
 「ありがとう、大地さんも合格おめでとう」
 二人は笑いながら固く握手を交わした。

 帰り道、美咲は夕暮れの街を歩きながら思った。
 ――これからが本当のスタートだ。
 ロボダンと共に、人を守る新しい警備の形を作っていく。
 その決意は、胸の奥で確かな炎となって燃え始めていた。

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